リチウムイオン電池の安全性

1.リチウムイオン電池の発火・爆発を防ぐ

リチウムイオン電池に関しては、電池の発火トラブルが現在も市場で起こっています。以下の表は、一般的に知られているリチウムイオン電池の安全性の概要になります。

<リチウムイオン電池の安全性の概要>

項目 概要
最重要事実 電池の発火トラブルが市場で起こっている
電池の発火の基本機構 熱暴走
電池の安全性の特徴 過充電と加熱に弱いこと
電池事故の原因
  • 製造不良→電池の内部短絡→発火というパターンが多い
  • 予想外の過酷な使われ方
  • 電池の設計不良
安全性を判断する理論方程式 未確立
電池の安全性評価
  • 安全性試験結果で判断。試験項目と評価方法がポイント
  • トラブルのフィードバック。各企業のノウハウ
電池の安全性 電池材料、電池構造、電池の充放電制御システム(安全性確保策)を総合して決定
電池の事故 充電中の事故が多い
電池サイズ 電池材料が同一の場合、電池サイズが大きいほど安全性が低下
使用後の電池の安全性 新品電池と比較すると、電池使用後、安全性は変化することが多い。電池性能劣化モードは完全には把握されていない
安全性向上対策の研究開発 日々進展
モバイル用電池 国内販売に法的に安全性確保を義務付ける特定工業製品

リチウムイオン電池は、正極、負極、電解液などの電池構成部品が同一の場合でも、電解液量が変化しただけで電池の安全性が変化します。また、それらが全く同一の電池の場合であっても、放電電流、充放電方法が変わるだけで電池の安全性は変化します。

そのため、年々電池が新しくなり、使用方法も変化する現在において、リチウムイオン電池の安全性の確保は容易ではありません。

2.市販リチウムイオン電池の安全性確保策

リチウムイオン電池単体には安全性確保技術が導入されています。しかし、電池単体での安全性確保は難しいため、安全性確保のために、電池パックとして一般ユーザーには販売されています。

電池パックには、保護回路、保護素子、ヒューズ等がセットになっています。また、電圧、電流、温度等を検知しながら充放電制御システムによって電池の充放電は制御されています。

市販リチウムイオン電池パックは、通常の使用範囲では安全性に問題はありませんが、極端な誤使用、製造不良で保護回路が作動しない場合など、電池が発火・発煙・破裂、極端な発熱などを起こすことがあります。

事故原因としては、電池の内部短絡が最も多く、加熱、衝撃、過充電や電解液漏れと内部短絡が複合的に起こった時、発火や破裂に至ると考えられています。

▽続きはこちら
書籍『リチウムイオン電池の安全性と要素技術』