DC-ACパワーインバータの概要

1.インバータとは

インバータとは,直流を交流に変換する回路及び装置のことです。似たような回路及び装置にコンバータがあります。コンバータは,インバータとは逆に,交流を直流に変換する回路及び装置です。

図1.1 コンバータとインバータの違い

直流を交流に変えると,周波数が変わります。インバータの主な役割は,電圧変換と周波数変換です。日本においては,異なる周波数と電圧を得るために,商用電源から一度直流に変換して,再び任意の周波数と電圧の交流電源に変換する装置があります。このようなコンバータとインバータを組み合わせて同一筐体内に収容した周波数・電圧可変装置は,インバータとも呼ばれています。周波数と電圧を自由に調整することで,エアコンや洗濯機など動かすモーターを低消費電力化にすることができます。

一方,バッテリーなどの直流電源を,商用電源のような一定の周波数と電圧に変換する装置もインバータと言います。このようなインバータは,主に停電時や,商用電源が届かない場所での電源を確保することが目的です。

同じインバータと言いますが,用途と目的が異なります。区別するため,後者はDC-ACパワーインバータとも言います。

図1.2 電圧・周波数可変のインバータとDC-ACパワーインバータ

2.DC-ACパワーインバータの出力波形の違い

市販のDC-ACパワーインバータは,出力波形の違いで,更に矩形波,疑似正弦波,正弦波があります。同じ直流を交流に変換する装置ですが,それぞれ作り出した交流は,全く違います。

交流は,直流と違い,電圧と電流が時間とともに周期的に変化します。その変化をグラフで書いてみると,横軸が時間(t)を,縦軸が変化の大きさと向きを表すと,海の波のようにカーブになります。この波形は三角関数の正弦波です。サイン波とも言います。カーブが滑らかな正弦波に対し,矩形波はブロック状の直線的なものになります。疑似正弦波は,矩形波のブロックを更に細かく切り刻んで,より正弦波に近い矩形波です。

商用電源と同レベルの正弦波を作り出すには,矩形波や疑似正弦波より複雑のため,品質も価格も差が生じます。矩形波や疑似正弦波のDC-ACパワーインバータで作り出した交流は,動作できる電子機器が限られています。また,ノイズが発生したりする場合があります。正弦波DC-ACパワーインバータであれば,使用する機器を選びません。全ての電子機器が正常に動作できます。

図2.1 正弦波と非正弦波の違い

3.DC-ACパワーインバータの課題

DC-ACパワーインバータには様々な課題がありました。DC-ACパワーインバータは,電力を直流から交流に変換する際に,必ずロス電力が生じます。これらのロス電力は,ほとんど熱に変わってしまいます。変換効率が低ければ低いほど,ロス電力が高くなり,より多くの熱量が発生します。熱がたまると温度が上昇し,機器やシステムの運転に支障が出てしまいます。冷却ファンは,迅速に熱を機器の外に排出することができますが,冷却ファンの消耗や故障リスクは,他の部品より高い傾向があります。冷却ファンの騒音やノイズが,静粛性や精密性を求めるシステム不向きになります。

DC-ACパワーインバータの一次側によくバッテリーを利用されます。バッテリーは,鉛バッテリーやリチウムイオンバッテリーなど,様々な種類があり,それぞれの電圧範囲も少し異なります。入力電圧範囲の狭いDC-ACパワーインバータですと,対応可能なバッテリーが限られています。

4.DC-AC正弦波パワーインバータDIASINE

新製品DC-AC正弦波パワーインバータDIASINEは株式会社電菱の研究開発スタッフが,DC-AC正弦波パワーインバータの,これまでの課題を集め,回路,構造をゼロベースで見なおした新設計により小型・ファンレスを実現させています。

DIASINEは,国内,国際特許出願した独特の回路設計で,回路の最適化を進め,無駄なロス電力をなくし,変換効率を高め,発熱量を抑えることできました。ファンレスのため,スリム化に成功し,システムデザインの自由度が増し,設置環境の幅が広がっています。ファンの動作音はなく,静粛な使用環境を提供します。また,ファンの消耗や故障リスクがないことで,長寿命の製品となっています。

独特の回路設計で,入力極性逆接続をしても,本体は警告を発するのみで,従来品のような内部ヒューズの溶断や本体の破損はありません。設置ミスによる故障の一大要因がなくなり,メンテナンスの負担を減らしています。更に,入力電圧範囲を広げたため,放電可能電圧の広い電池が利用できます。バッテリーを充電しながら安定稼働させるシステムの運用も可能になりました。

図4.1 DIASINEの特徴

5.DC-ACパワーインバータを利用したEV向けアプリケーションの紹介

5.1 EV充電ステーション

電気自動車の普及で,充電ステーションの需要も高まっています。その中には,太陽光発電システムを搭載した充電ステーションもあります。太陽電池モジュールから発電した電力を一度バッテリーに蓄えます。バッテリーは直流のため,そのまま電気自動車には充電できません。そこでDC-ACパワーインバータが必要なります。DC-ACパワーインバータを介して,バッテリーの直流を交流に変換し,電気自動車に充電します。

商用電源を使わない分,CO2の排出量が削減できるため,地球環境にも優しいです。また,太陽光発電システム搭載した充電ステーションは,災害時の時に,一時的な避難場所としてご利用できます。携帯などの充電サービスを提供することもできます。

図5.1 太陽光発電システムを搭載した充電ステーション

5.2 EVの蓄電池を防災,非常時の電源への活用

電気自動車は一般のガソリンで駆動する自動車と比べて,内蔵しているバッテリーの容量が大きいです。そのため,停電時や災害時に,電気自動車に内蔵しているバッテリーをDC-ACパワーインバータで交流電源に変換すれば,非常時の電源として利用可能です。例えば,12V150W出力のGD150NA-112といいた小型DC-ACパワーインバータであれば,アクセサリーコンセントを持たない車にもアクセサリープラグに後付けで設置することができ,簡単に交流電源を取り出すことができます。

図5.2 車のアクセサリーソケットから100V交流電源を取り出す

5.3 車内で電化製品利用するシーンなど

バッテリーとDC-ACパワーインバータがあれば,車や船舶などの移動体では,電化製品を稼働するための交流電源を確保することができます。回診車や工事作業車など産業用の特殊車両から,キャンピングカーレジャー向けのビークルまで,DC-ACパワーインバータは,幅広く活用されています。今後,電気自動車の普及が進むことで,大容量バッテリーを搭載した自動車が増えていけば,DC-AC正弦波パワーインバータの活用も広がっていくと期待されます。

参考カタログ