EV充電器設置工事とは
1. 充電器設置はどんな工事?
充電器を設置する敷地(または建物)内にある電源を利用して、新たに充電器用の回路を設けます。既設の分電盤や電力メーターから充電器を設置する場所まで電源ケーブルを敷設します。充電器は主に壁に直接取り付ける場合と専用スタンドを床に固定してスタンド自体に充電器を取り付ける場合がございます。また、充電器専用のブレーカーを取り付ける事により、充電器の漏電を防ぎます。
2. 充電方式の種類
基礎充電、目的地充電、経路充電の3つの方法がございます。
2-1. 基礎充電とは
ご自宅や職場に車を停めている間に充電する方法です。長時間滞在する場所で行なう充電ですので、急速に充電する必要がないため、基礎充電を行なう場所には普通充電器を設置するケースが殆どです。
2-2. 目的地充電とは
商業施設やアミューズメント施設、宿泊施設、スポーツ施設など、出かけた目的地で行なう充電方法です。この場合、目的によって滞在する時間は様々ですので、普通充電器を設置するケースも急速充電器を設置するケースもございます。
2-3. 経路充電とは
高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、道の駅など、遠くへ出かける際に立ち寄る場所で行なう充電方法です。30分間程度の短時間で急速に充電できる設備を要するため、経路充電を行なう場所には急速充電器を設置するケースが殆どです。
3. 充電器の種類
充電コンセント、普通充電器、急速充電器の3種類がございます。先述の通り、充電方法や用途によって、充電器の選定が必要となります。
3-1. 充電コンセント
主に基礎充電をする場所に設置します。10万円程度(電源ケーブルを敷設する距離が長い場合、さらに高額になるケースもある)で設置が可能なため、ご自宅用に選ばれる事も多いのですが、充電のスピードが遅く、使用する度に充電用車載ケーブル(車を購入する際に標準で付いてくる場合とオプションで購入する場合があります)を充電器と車に繋げなくてはならないため、ユーザーからは面倒という声も多い。また、自動車メーカーで用意している車載ケーブルは長さが5メートル程度の物が多いため、充電コンセントの設置場所と車の給電口(ガソリン車でいう給油口) までの距離が長いと、最悪な場合、車載ケーブルが届かなくて使用できないというケースもございます。
3-2. 普通充電器
基礎充電や目的地充電をする場所に設置します。20万円から50万円(電源ケーブルを敷設する距離が長い場合、さらに高額になるケースもある)程度ですが、コンセントタイプの倍の速度で充電できる機種もあり、充電ケーブルが充電器自体に接続されているので、コンセント式のように充電する度に車載ケーブルを準備する必要がありません。充電ケーブルは5メートルの物から10メートルの物まで用意されている機種もございますので、充電器の設置場所と給電口までの距離が長い場合でも充電ケーブルが届かないという事がなくご利用できます。
3-3. 急速充電器
目的地充電や経路充電をする場所に設置します。その名の通り、急な充電を要する場合には最適ではありますが、コンセントや普通充電器と比較して非常に高額になり、200万円以上(電源ケーブルを敷設する距離が長い場合や高圧受電設備を新たに設ける場合、1000万円以上になるケースもある)の費用がかかりますので、一般的にはあまり導入されるケースは少なく、公共の施設、大型ショッピングモール、自動車販売店、運送会社、タクシー会社、自動車教習所など不特定多数の利用客がいる施設や、多くの台数の自動車を利用する業種の会社への導入が殆どです。
また、急速に充電を行なうため、車両に搭載しているバッテリーへの負担も大きいと危惧されており、急速充電器の規格に合う給電口が付いていない車種も多数あるため、導入する際には専門業者に相談する事をお勧めいたします。
4. 設置費用とランニングコスト
コンセント | 普通充電器 | 急速充電器 | |
---|---|---|---|
家庭用 | 10万円~20万円程度 | 20万円~50万円程度 | - |
事業用 | 10万円~30万円程度 | 30万円~100万円程度 | 200万円~ |
※あくまで一般的な相場になります。
- 電源を取る場所から充電器までの距離が長くなる場合、大幅にコストが上がる場合もございます。
- 電源ケーブルを埋没する場合、大幅にコストが上がる場合もございます。
- 建物内から電源を取る場合、ケーブルを建物の中から外へ通すための穴を開ける事もあり、コンクリート造の建物や特殊な外壁材が使われている建物ですと大幅にコストが上がる場合もございます。
- その他、EV充電器を設置する場所の構造や環境によってコストは変わってきますので、専門の工事業者に現地調査を行ってもらって見積もりをもらう事をお勧めいたします。
5. メンテナンスと修理
コンセントや普通充電器の場合、メンテナンスは殆ど必要ありませんが、設置環境により、ほこりや汚れが蓄積して性能に影響を与える可能性があるため、ユーザー様ご自身で充電器の外面、コネクター、充電ケーブルを柔らかい布で拭くなどして、綺麗な状態を保つようにする事をお勧めします。また、使用していく中でコネクター部分(写真の赤丸)を破損するケースが特に多くございますので、充電する際に取り扱いは丁寧に行なうよう注意が必要です。
急速充電器については、専門業者による年1回程度の定期メンテナンスが必要です。
部品ごとの清掃に加えて高圧受電設備の点検を行ないます。費用については30万円程度/年になります。
6. 自宅や商業施設に設置するメリット/デメリット
6-1. 自宅に設置するメリット
① 施設などにある課金制の充電器を利用するよりも安価な電気代で充電ができる。(施設にある充電器は電気代に利益を上乗せして利用料金を徴収するため)
② 施設などにある充電器を利用する場合、満充電にするまでに長時間かかるため、その間は車を利用できず、時間を持て余してしまうケースもあるが、自宅に充電を設置してあれば就寝中の時間や車を利用しない時間帯に充電ができる。
③ 施設などにある充電器は電気自動車のユーザーが増えれば当然のように充電器利用者で混み合うので、充電器を利用するまでに数分、場合によっては数時間、順番待ちをしなくてはならなくなる事が想定される。自宅に充電器を設置していれば、〝自分専用〟となるので、順番待ちのようなストレスは無い。
④ 施設などにある充電器は、③のような混雑を避けるために〝最大30分までのご利用〟という規制を設けている所が多く、仮に急速充電器で30分充電をした場合、おおよそ100km程度(充電器の機種や車種によって異なる)の走行ができる分の充電しかできない。普通充電器ですと30分充電したところで15km程度(同じく充電器の機種や車種によって異なる)の走行ができる分の充電しかできない。②でも書いた通り、自宅に充電を設置してあれば就寝中の時間や車を利用しない時間帯に充電ができるので、電欠(ガソリンで言うガス欠の状態)を恐れながら運転をするケースは少なくなる。
6-2.自宅に設置するデメリット
① 充電器を設置するための費用がかかってしまう。
② 充電器を設置することによって、従来の生活で使用していた電気よりも多くの電力量を要する事にな るので、電力会社の電力契約容量を上げなくてはならない。その事により、電気の基本料金も含め、毎月の電気代が上がってしまう。それを避けるために、現状のままの電力契約容量で充電器を設置する方も居りますが、生活の中で電気を使いすぎてしまうと電気容量をオーバーしてしまいブレーカーが落ちて電気が一時的に使えなくなってしまう事があるので、充電器を設置する際には電力契約容量を上げることをお勧めします。電力契約容量を上げる手続きについては、充電器設置工事業者にご相談されるのが良いと思います。(電気自動車に乗ればガソリン代がゼロになるので、たとえ電気代が上がったとしても、今までの費用に比べたらかなり安くなります。)
③ 日本の治安もだんだんと悪くなってきている事から、留守中なのを見計らって他人の家の充電器を勝手に使用する輩も出現すると危惧しています。いわゆる〝盗電〟が増えているというニュースを近い将来は耳にする事も多くなると思います。メーカーも〝盗電〟対策として非接触カードキー等を用いて他人が勝手に充電しようとしても通電しない機能を既に導入している充電器も多数ありますので、充電器を購入される際は専門業者へご相談されることをお勧めします。
6-3.商業施設に設置するメリット
① 商業施設に課金制充電器を設置した場合、先述の通り、充電にかかる電気代に利益を上乗せした料金でユーザーは利用するので、充電器利用者が多い施設では毎月の収益になる。
② 経路充電をする電気自動車のユーザーは、現在地から近い【EV充電器のある施設】を簡単に探せるアプリを利用している事が多いので、施設事業主はそのアプリにEV充電器のある施設として登録しておけば、ユーザーは経路充電をする目的で施設を訪れるようになります。
③ 課金制充電器を利用するユーザーは充電中、時間を持て余してしまうので、その時間を活用して商業施設で買い物や飲食を楽しむケースが多い。それらの収益アップにも繋がる。
6-4.商業施設に設置するデメリット
① 充電器を設置するための費用がかかってしまう。(補助金でカバーできるケースも多い)
② 充電器の利用者が不特定多数になるため、充電器の故障のリスクが高い。例えば、コネクターを放り投げて破損する。充電器に車両が接触して破損する。充電ケーブルを車両が踏んでしまいケーブルが破損するなど。
③ 充電したまま数時間駐車をされてしまい、本来の施設利用者が駐車スペースを確保できなくなるケースも懸念される。
7. オプション工事
7-1. 専用スタンド
充電器を設置する際にどの場所に取り付けるか、用途や駐車スペースによって変わります。壁に直接設置する場合(画像左)、ビスで壁に固定するため、1センチ程度の穴(3~4か所)を壁に開けることになります。建物に穴を開けたくないという方や駐車スペースの近くに壁面が無い場合、充電器専用スタンドを使用します。スタンドを建てる場合(画像右)でも地面との固定が必要となりますので、1~3センチ程度の穴(4か所)を地面に開けることになります。
7-2. デマンドコントローラ
先述の通り、EV充電器を設置するにあたり、電気の使用量が多くなるため、電力契約容量を上げる必要がありますが、毎月の電気代が上がってしまうのを避けたい方にお勧めの商品です。EVの充電に使う電気以外の家庭内で日常使用している電気を優先するようにコントロールするので、家庭内でたくさん電気を使用している時にはEV充電はされません。留守中や就寝中など家庭内で使用している電気が少ないタイミングにEV充電されるため、電力契約の容量を上げずに済むので基本契約料金は現状のままでEV充電ができます。しかし、頻繁にEVの充電をされる方にとっては不便を感じるかもしれません。
7-3. SPD(避雷器)
EV充電器を設置した建物や周辺に落雷があった場合、直接雷や誘導雷によって分電盤を通じて電化製品等を故障させてしまう可能性があるので、それを防ぐための商材です。
7-4. 防犯対策
EV充電器や車両の盗難、盗電、悪戯防止のために防犯カメラでの監視や人感センサーライトを駐車スペースに設置する事をお勧めします。また、昨今は〝リレーアタック〟という方法で車両の盗難が多発しているので、高級EV車両を購入した方はSmartキーBOXという商品を購入して、駐車中はSmartキーがそのBOXの中にしまっておくことをお勧めします。
8. 補助金と申請方法
国や各自治体と様々な補助金を活用することができます。個人向けや法人向けなど、申請先によって補助金額や必要書類などの条件が異なり、交付決定がされてからの設置工事になる事がほとんどなので設置時期も考える必要があります。
補助金や設置時期など設置業者に確認することをオススメします。
9. その他
充電器がペースメーカーのペーシング出力に一時的な影響を与える場合があります。
「充電中」の充電スタンドや「充電中」の充電ケーブル には近づかないでください。
厚生労働省『医薬品・医療材器等安全性情報』では、急速充電器で53cm以上、普通充電器で12.5cm以上距離を置くことと記載されていますので、ペースメーカーを付けている方は急速充電器を使用しないでください。また、急速充電器で充電を行なっている最中に車内に居る事も大変危険ですので控えるようにしてください。
株式会社リアルヴィジョンは2011年より太陽光発電や蓄電池の施工・販売を行なっている会社です。節電対策だけでなく災害対策の商材としても注目を浴びているのですが、ユーザー様にはイマイチ分かりづらい商材でもありますので、導入前のサポートは勿論、導入後のサポートも行なっております。
2017年からEV充電設備の施工も行なっており、同年に世界シェア№1である米国の某EVメーカーの推奨施工業者に選ばれ、今日まで数々のEV充電設備を設置してまいりました。ここ数年は各自動車メーカーが電気自動車の製造・販売に力を入れ始めている事もあり、メーカーを問わず全国の自動車販売店と協力しながら、EV充電設備の普及拡大のサポートも行なっております。
EVを普及させるためにはインフラ拡大が急務だと感じ、そのためには先ずEV充電設備工事ができる職人さんをもっと全国的に増やすことが重要だと思い、2023年に「一般社団法人EVスタンド普及促進協議会」を設立し、全国の電気工事業者様向けに【EV充電設備施工技士 資格認定講座】を毎月開催しており、講座後に行なう試験の合格者にはプライベートライセンスを発行しております。
一般社団法人EVスタンド普及促進協議会 (evs.or.jp)
電気工事・電気通信設備工事|リアルヴィジョン (real-vision.co.jp)