自動車向けの放電技術とは
1. 自動車向けの放電技術の概要
1-1. 本件は静電気の放電に関する特許・実用新案に基づく放電技術ならびに製品です。
自動車にはエンジン、モーター、補器類、トランスミッションなどで静電気が発生する他、クーラントやオイルの循環、タイヤの回転や空気等との摩擦でも静電気が発生しています。特に回転する部品や導電性が低い物質には静電気が多く発生、蓄積(帯電)する事から、自動車以外でも洗濯機、業務用掃除機やエアコンの室外機等はアース線から静電気を放電させています。
セーターやフリースを脱ぐ際に静電気が発生すると、より力が必要になるのは一般的に認識されており、静電気を帯電防止スプレーで除電する事により、少ない力で脱ぐ事ができます。
このように静電気は物質(気体・液体・固体)の動きの抵抗になっています。
静電気を放電(除電)させる事で物質がスムーズに流れ、部品が少ない力で作動するようになるので、振動が減少してエネルギー効率を改善できる他、操作性や耐久性が向上します。
1-2. 自動車には大きさや重量の制約がある他、省電力化が求められており、小型で軽量、電源を使用しない放電装置が最適です。EV(電気自動車)やハイブリッド自動車ではバッテリーの重量もあり、タイヤの摩耗が多くなります。タイヤに帯電している静電気を放電する事により、転がり抵抗が減少すると共にゴムの分子の動きが改善し、振動をより多く吸収して静粛性も向上します。
マジ軽ナットシリーズでの静電気の放電は、既に販売されている自動車に追加で取り付け可能、低コストで作動を改善して、無駄に使われているエネルギー(マイナス)を減らす事で、エネルギー効率を改善する技術です。
2. 自動車の静電気の問題点
静電気の放電量が不足すると車体が帯電した状態になり、帯電量が極端に多い場合には自働車のドアノブや金属部分に触れる際に人体への放電現象が発生します。身体に痛みを感じる静電気は電流が低いものの、電圧は約3,000V以上で、非常に不快な現象です。
また、車体に静電気が多く帯電した状態で走行中、道路の鉄製の継ぎ目やマンホール等の導電性の高い金属部分にタイヤが接触した瞬間に、帯電している静電気が一気に放電してラジオにノイズが発生する他、電気機器に誤作動が発生した事例も報告されています。
3. 自動車の静電気対策の現状
近年、燃費改善の要求が高まり、省燃費となるタイヤの転がり抵抗を減少させるために、タイヤのゴムの原料にシリカを配合することが多くなりました。タイヤのゴムには補強と路面に放電させる目的でカーボンブラックが配合されていますが、シリカを配合した為に相対的にカーボンブラックの配合比率が低くなり、ゴムの導電性が低下して路面への放電量が不足し、車体の帯電問題は解決できていません。
路面への放電量が不足している問題を解決すべく、タイヤメーカーはタイヤの接地面のゴムの一部分に導電性の高い部分(いわゆる導電スリット)を設け、一定の放電量を確保しようとしている他、タイヤの側面に模様をデザインし、そこからも静電気を放電させる工夫をしています。
しかし、現時点では十分な放電量はタイヤの改良だけでは解決していません。道路舗装の多くはアスファルト舗装であり、アスファルトはプラスチックなどと同じ石油由来の原料である為に導電性が低く、車体に帯電した静電気のタイヤを通じた路面への放電量が不足している為に、静電気が十分に放電されずに車体に蓄積された状態で走行しています。
そのような静電気の放電をタイヤだけに頼らず、発生源や帯電量の多い箇所で放電する製品がマジ軽ナットシリーズです。
4. 自動車向けの放電技術の原理
静電気を効率良く放電する素材を放電素子に用いています。マジ軽ナットシリーズはネジ・ボルト・バンド形状で、既存の部品に追加または交換して静電気を放電する事で、効率良く除電できます。
(特許出願2014年3月、特許取得2018年12月)
静電気は導電性の高い金属を流れ、プラスチックやゴムなど導電性の低い部品は静電気が流れる事ができずに多く帯電します。静電気が発生している箇所で一定量放電させると共に、帯電量が多い箇所でも放電する事で効率良く除電する事ができます。
物質の動きに悪影響を与えている複数の要因のうちの一つである、静電気を放電させる事で部品が少ない力でスムーズに作動するので、作動性が向上すると共にエネルギー効率が改善されます。
また、オイルやグリスに静電気が帯電すると粘度が高くなる為に、作動や運動により力を要しスムーズな動きに悪影響を及ぼします。静電気を放電する事で粘度上昇を抑制できるので、より少ない力で動き始めてスムーズに作動します。
5. 自動車向けの放電技術の種類
6. 自動車向けの放電技術の用途
7. 自動車向けの放電技術のメリット
7-1.後付け可能で低コスト
既存のボルト・ナット・バンドと交換するか付け足すもので、作業時間が短くて済みます。
タイヤ用は工具不要で取り付けられます。
7-2.小さくても効率良く放電
特殊合金製の放電素子から効率良く放電します。
7-3.省エネルギー
エネルギー効率を下げている要因の一つである静電気を除電する事で、流体がスムーズに流れ、部品が少ない力で作動するので、無駄に使われていたエネルギーを低減できます。
7-4.耐久性抜群
劣化しにくい材質なので、耐久性があります。
7-5.再利用が可能
耐久性が高い為、適応するサイズが同じであれば再利用が可能です。
自動車・オートバイのタイヤのエアーバルブのネジ部は世界共通規格なので、汎用性があります。
7-6.電源不使用
電源が不要なので、消費電力を考える必要はありません。
7-7.振動の軽減
部品が少ない力で作動するので、取り付け箇所によっては振動が軽減されます。
7-8.省ランニングコスト
除電した部品が少ない力で作動するので、耐久性が向上します。部品によっては交換のスパンが長くなる事でコストが削減可能です。
7-8.スムーズな動き
部品がスムーズに動く事で、作動や操作性が改善して走行・操縦安定性が向上します。
8.自動車向けの放電技術の効果
除電により各部品が少ない力で作動・運動するので、除電箇所により様々な効果が生まれます。
8-1.タイヤ
転がり抵抗が低減するので、走り出しが軽くなります。エコモード発進の自動車でも発進時のもたつきが軽減されます。ゴムが分子レベルで動きが改善されるので、振動をより吸収して静粛性が向上します。
タイヤ用のマジ軽ナットは自動車、オートバイ、自転車(英式・仏式)、車いす用をラインナップしています。
8-2.吸気系
空気や混合気が流れる事で流動帯電が発生し、特にプラスチックやゴム部品に帯電してスムーズな流れを阻害しています。除電によって流れが効率化し、吸気効率が改善されてエンジンの始動性も向上します。
帯電した空気と他の物質との衝突で発生する電磁波による、吸入経路に設置してある各種センサーの正確な計測の悪影響を低減できます。
8-3.エンジン
エンジンの各行程で発生する静電気量を減らす事で各部品が少ない力で作動するので、アクセル操作に対するレスポンスが良くなります。エンジンベンチテスターで燃料消費率が改善する事が確認されています。(下図参照)
8-4.ラジエターホース
クーラントに使用されるグリコール系の物質は静電気の蓄積量が多い物質で、帯電で流れが悪くなります。
そのためクーラントを強制循環させるウォーターポンプで、多くのエネルギーが消費されています。静電気を放電する事でエンジンのエネルギーの消費量を低減し、その分が走行に使えるようになります。
8-5.足周り・操作系
除電によりサスペンション等の作動油や作動部に使用されているグリスの粘度上昇が抑制されるので、より少ない力でも作動し始めてスムーズな作動となり、ドライバビリティーが向上します。
8-6.ミッション
多くのギアが回転しながらスライドするので静電気発生量が多い箇所です。除電でオイルの粘度上昇を抑制できるので、ギアの作動が改善されてスムーズな作動になります。
8-7.ディファレンシャル
大きなギアが粘度の高いオイルの中で回転をしていて、静電気の帯電により更にオイルの粘度が上昇してエネルギーロスが多い箇所です。除電でオイルの粘度上昇を抑制する事で、駆動により多くのエネルギーを使えます。
8-8.その他の箇所
物質の流れ・動きを改善する事で少ない力でもスムーズに作動し始め、無駄に使われていたエネルギーを低減する事が可能です。
9. 自動車向けの放電技術のデメリット
静電気の発生量は気温や湿度、エンジンやモーターの回転数、速度やタイヤから路面への放電などにより、絶えず変化しています。静電気の放電量は多ければ多いほど良いというものではなく、放電量が多過ぎると過放電の状態になり効果が減少します。従って、一定量の放電に留めるようにする必要があります。
除電が必要な箇所に対して基本的に一つのボルト、ナット、バンドに留めれば、過除電になる事はありません。
【参考資料】
放電効果の高い箇所を特定するために、事務用のクリップ(通称 目玉クリップ)に自動車用マジ軽ナットを溶接して、エンジンベンチテスターを用いてエンジン性能の変化を検証した。このクリップでの放電量は、ボルト・ナット・バンドと比較して少なくなるものの、簡易的に確認することが可能である。
グラフ中のファイル名下線部の「なし」はクリップ未装着、「あり」はクリップを装着して測定したグラフ。
取り付け箇所はヂーゼルエンジンのシリンダーヘッド部及び、シリンダーブロック部に各1個を取り付け、同条件にて測定した。
10. 自動車向けの放電技術の応用
低コストで効率が改善される為、産業分野から一般家庭まで広く利用する事で効率・性能が改善し、エネルギーが節約できます。
ラジエターホースでの除電を産業に転用するならば、液体をパイプやホースを用い圧送する際に流動帯電が発生してスムーズに流れにくくなり、その状態で圧送する為に強力なポンプが必要となります。
流動帯電を放電する事で、ポンプ・モーターの小型化・効率化に繋がる事が期待できます。
例えば重機の油圧ホース、船舶・航空機等への燃料の注入ホース、各種プラントの配管など。
ラジエターは表面積を増やすために流路の間に細かいフィンが設けられています。静電気の帯電により空気の流れとの干渉が増加して、通過効率が低下し冷却効率も低下します。静電気の放電によって冷却効果を高める事ができます。ラジエターの他、インタークーラーやラジエター形状を使用する熱交換システムにも転用可能です。冷却効率が高まる事で熱交換システムの小型化・省資源化が可能です。
自動車のエアフィルター・エアコンフィルターに除電ネットを取り付けると、吸入する空気によって発生する静電気が低減して、吸入効率が改善されます。
これを応用して、家庭用のエアコン室内機のフィルターに除電ネットを取り付ける(写真左側)と、自動車のエアコンフィルターと同様に熱交換効率が改善されるので、電力消費を抑制できます。(エアコンの設定温度は真夏でも扇風機併用時あり 毎年29℃~30℃で使用)
また、オーディオ愛好家の間では、かなり以前から静電気に起因する音質の劣化を除電によって改善する事が行われています。オーディオのアンプにマジ軽ナットを装着(写真右)した、放電による音質改善の例です。
このように、低コストで自動車はもちろん、幅広い分野に応用する事で効率化・省エネルギー化ができるのが除電技術です。
自動車は技術革新により効率化、省エネルギー化が限界近くまで進んでいます。
静電気の除電は、自動車業界ではつい最近まで未開の地であったからこそ、伸び代が大きい技術です。
マジ軽ナットシリーズは、既に販売されている自動車に取り付ける事ができるアフターマーケットパーツです。
自動車の部品の多くを固定しているボルト・ナット・バンドに付け足す、または交換する事で効率的に静電気を除電してエネルギー効率や作動を改善し、走行性能を高める特許製品です。
走行の要であるタイヤからが、除電の基本となっています。タイヤを除電するマジ軽ナットシリーズは、自動車、オートバイ、自転車2種類、車いす用をラインナップしています。
(著)トライスターズ テック