グリーンイノベーション基金事業で、圧力が低く、CO2濃度の低い排気ガスからCO2を分離回収する技術開発に着手
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NEDOはグリーンイノベーション基金事業の一環で、「CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」(予算総額382億円)に着手します。本プロジェクトでは、高圧でCO2濃度が高い排気ガスに比べ、CO2分離回収に多くのエネルギーを要するとされる、低圧・低濃度の排気ガス(CO2濃度10%以下)を対象として、2030年に2000円台/t-CO2以下のCO2分離回収コストを実現するための技術開発に取り組みます。これにより、CO2分離回収関連の設備産業や素材産業の拡大、また、将来的には、カーボンリサイクル産業に対し、コスト競争力のある分離回収されたCO2の提供が期待されます。
1.グリーンイノベーション基金事業について
日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げました。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするものであり、実現するにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要があります。このため、経済産業省はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げました。
2.本プロジェクトの背景
本プロジェクトはグリーン成長戦略で実行計画を策定した重点分野を支援対象としており、その一つとして「カーボンリサイクル・マテリアル産業」が挙げられています。
二酸化炭素(CO2)分離回収の低コスト化・低エネルギー化には、CO2回収効率を飛躍的に向上させる素材などの開発、カーボンリサイクル/CCUSまでを包含した全体システムの開発が必要となりますが、利用形態に応じて排ガス特性[圧力や濃度、含まれる夾雑物(きょうざつぶつ)の種類と量など]はさまざまであることから、一定の分類の下に、最適な素材・プロセスなどを開発することが求められます。 これまで、EOR(原油促進回収法)に用いられるCO2分離回収技術の商用プラントが国外で稼働している他、国内でも、石炭火力発電や製鉄プロセスなどにおけるCO2分離回収技術の開発・実証が進められています。今後は、より低圧・低濃度の排ガスへの対応に進展していくことが見込まれます。そこで、NEDOは経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画に基づき、ガス火力発電、工業炉といった産業プロセスなど、CO2濃度が10%以下の領域を対象とした「CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」の公募を行い、7テーマを採択しました。
3.事業内容
本プロジェクトでは、世界に先駆けて、CO2濃度10%以下の低圧・低濃度のCO2に対して、2030年に2000円台/t-CO2以下のCO2分離回収コストを実現するための技術開発に取り組みます。これにより、CO2分離回収関連の設備産業や素材産業の拡大、また、将来的には、カーボンリサイクル産業に対し、コスト競争力のある分離回収されたCO2の提供が期待されます。