グリーンイノベーション基金事業、「次世代蓄電池・次世代モーターの開発」に着手

更新日:2022.5.20

NEDOはグリーンイノベーション基金事業の一環で、「次世代蓄電池・次世代モーターの開発」プロジェクト(予算総額1510億円)に着手します。 本プロジェクトでは蓄電池やモーターシステムの性能向上とコスト低減のほか、材料レベルからの高性能化・省資源化、高度なリサイクル技術の実用化に向け、技術課題の解決に取り組みます。これにより自動車の電動化を支える技術や蓄電池・モーターの産業競争力を強化するとともに、材料やリサイクルを含めたサプライチェーン・バリューチェーンの強じん化を目指します。

1.グリーンイノベーション基金事業について

日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げました。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするものであり、実現するにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要があります。このため、経済産業省はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げました。なお、NEDOは本基金事業の取り組みや関連技術の動向などをわかりやすく伝えていくことを目指し、「グリーンイノベーション基金事業 特設サイト※1」を公開しています。

2.本プロジェクトの背景

本基金事業はグリーン成長戦略※2で実行計画を策定した重点分野を支援対象としており、その一つに「自動車・蓄電池産業」があります。自動車の利用段階における二酸化炭素(CO2)排出量は国内外ともにCO2排出量全体の16%を占めることから、温暖化対策として世界の自動車産業は電動化の動きを加速しています。すでに欧州や中国では電気自動車やプラグインハイブリッド車が急速に普及しているほか、各国で燃料電池トラック・同バスの開発を支援する取り組みも強化されています。日本でも自動車産業の競争力を維持・強化するために、自動車の電動化に向けた取り組みを加速する必要があります。

しかし、電動車のさらなる普及には車両の低価格化や充電設備・水素ステーションといったインフラの整備に加え、蓄電池・モーターなど関連技術の強化と、材料などのサプライチェーンやバリューチェーンの強じん化が課題となります。また、自動車のライフサイクル全体におけるCO2削減という観点では、蓄電池やモーターの製造と廃棄時に発生するCO2の削減も重要となります。さらに、従来の蓄電池やモーターにはリチウムやニッケル、コバルト、黒鉛、ネオジム、ジスプロシウムといった資源が大量に使用されていることを踏まえ、よりサプライチェーンリスクの低い材料の開発やリサイクルの実現も求められています。このような背景の下、NEDOは経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画※3に基づき、このたび「次世代蓄電池・次世代モーターの開発※4」プロジェクトの公募を行い、18テーマを採択しました。

3.事業内容

本プロジェクトでは、蓄電池やモーターシステムの性能向上・コスト低減をはじめ、材料レベルからの高性能化・省資源化、高度なリサイクル技術の実用化に取り組みます。これにより技術課題の解決を図り、自動車の電動化を支える技術や蓄電池・モーターの産業競争力を強化するとともに、材料やリサイクルを含めたサプライチェーン・バリューチェーンの強じん化を目指します。

  • 事業名:グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発
  • 実施期間:2022年度~2030年度(予定)
  • 予算:1510億円(NEDO支援規模)

【研究開発項目1-1】高性能蓄電池・材料の研究開発

  1. 航続距離などに影響するエネルギー密度を、現在の2倍以上(700~800Wh/L以上)に引き上げる高容量系蓄電池(例:全固体電池)やその材料を開発します。
  2. コバルトや黒鉛など、特定の国や地域に対する供給依存度が高い材料の使用量低減を可能とする代替材料を開発します。
  3. 材料の低炭素製造プロセスなどを開発します。

【研究開発項目1-2】蓄電池のリサイクル関連技術開発

蓄電池材料として再利用可能な品質、かつ競争力のあるコストで、リチウム70%、ニッケル95%、コバルト95%以上を回収可能なリサイクル技術を開発します。

図1 研究開発項目1-1、研究開発項目1-2における開発対象
図1 研究開発項目1-1、研究開発項目1-2における開発対象
経済産業省 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 産業構造転換分野ワーキンググループ資料より抜粋

【研究開発項目2】モビリティ向けモーターシステムの高効率化・高出力密度化技術開発

モーターシステムの高効率化(システム平均効率85%)や小型・軽量化、パワー向上(システムの出力密度3.0kW/kg)に向け、材料やモーター構造、インバーター、冷却技術などの革新技術を開発します。

図2 研究開発項目2における開発対象
図2 研究開発項目2における開発対象
経済産業省 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 産業構造転換分野ワーキンググループ資料より抜粋