電気自動車のバッテリーがおくる有意義なセカンドライフ

電気自動車(以下、EV)のバッテリーには、セカンドライフがあることをご存知ですか?以前に日産ストーリーズでは、「日産リーフ」が動く蓄電池として活躍していることを紹介しました。今回は、「日産リーフ」がクルマとしての寿命を終えたあとも、車載バッテリーを取り出して再利用する取り組みを紹介します。
クルマが寿命を迎えても、EVの車載バッテリーは、同時に寿命を迎えるわけではありません。EVの車載バッテリーは、クルマが寿命を迎えるまで動力源として活用された後でも、新品時の60~80%の電力を貯蔵する能力があり、エネルギー貯蔵ソリューションとして再利用することができるのです。そこで、日産のパートナーであるフォーアールエナジー株式会社(以下、フォーアールエナジー)の出番です。フォーアールエナジーでは、EVからバッテリーを取り出し、48個ものモジュールをそれぞれ独自の技術で分析し、ランク分けします。
Aランクのバッテリーモジュールは、自動車用に十分な性能を維持しているため、電気自動車の交換電池として使用できます。
Bランクのモジュールは、自動車に比べて使用負荷の低い定置用蓄電池などに使用します。例えば、昼間に太陽光で発電した電気を家庭用蓄電池に貯めて、夜間に使うということが可能です。
Cランクのモジュールは、Bランクより更に使用負荷の低い用途、例えば停電時に作動するバックアップ蓄電池として活用できます。回収されたバッテリーの寿命は、そこからさらに10~15年なので、従来のバックアップ蓄電池として使われてきた鉛電池よりはるかに長いのです。例えば、冷蔵庫や照明を常時稼働させる必要がある食料品店などでは、停電や自然災害など電力網が故障した際のバックアップ電源が必要となります。そのような場合に、再利用バッテリーが十分に役に立つのです。
フォーアールエナジーは、日産と住友商事によって2010年9月に設立され、EVバッテリーの再利用、再製品化、再販売、リサイクルするための技術とインフラを開発してきました。EVのバッテリーをエネルギー貯蔵システムの一部として使用することは、二酸化炭素(以下、CO2)の排出量削減に貢献し、再生可能エネルギーの安定的な供給を実現する方策として大変有効です。EVバッテリーにさらなる価値を与えることでEVの価値はいっそう高まり、EVの普及にもつながります。
フォーアールエナジーの牧野さんは、元日産のEVプロジェクトメンバーで、これまでも EVの拡販に情熱的に取り組んできました。そして、現在はEVバッテリーの再利用に取り組んでいます。牧野さんは「EVが社会に与える影響力はまだまだ十分に評価されていません」と語ります。「10年前に『日産リーフ』が発売される前から、私たちはクルマが寿命を迎えたその先のことを考えることで、一歩前進することができるのではないかと考えていました。EVの場合、古いクルマを単に金属スクラップとして活用する以上の再利用が可能で、EVのオーナーの方にとってお得な、より良い再利用方法があることが分かったのです。」
牧野さんにとってEVバッテリーを再利用することは、環境面でのメリットを追求することにとどまりません。コスト面でのメリットも追及しています。EVにはメンテナンスコストと燃料代を削減できるという利点がありますが、ガソリン車のような内燃機関車よりも生産時のコストや購入コストが高いのが現状です。しかし、中古バッテリーの需要が高まれば、EVのオーナーは廃車時にバッテリーを高い価格で販売することも期待できます。フォーアールエナジーは、EV用としては適さなくなったバッテリーでも、日常生活の他の多くの領域に電力を供給するには十分な性能を持っていることに注目し、使用済みEVバッテリーを幅広い分野で活用し、普及させていくことを目指しています。
▽詳細はこちら
日産自動車株式会社