世界最高レベルの広角の低反射性と防曇性を兼ね備えた光学部材を開発
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【ポイント】
- 入射角45度の従来の反射防止限界をはるかに超える、世界最高レベルの入射角60度を実現
- 従来難しかった無機親水膜の防曇特性の持続期間が大幅に向上
- 大面積3次元ナノ構造金型量産製造ラインを整備し操業開始
1.概要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)製造技術研究部門【研究部門長 芦田 極】表面機能デザイン研究グループ 栗原 一真 研究グループ長と、東亜電気工業株式会社【代表取締役社長 重田 明生】(以下「東亜電気工業」という)は、広い波長帯域で広い入射角範囲の低反射率が実現できるモスアイ構造体をさらに越える、世界最高レベルの低反射特性と防曇効果を併せ持つナノ構造体を開発した。
今回開発した技術は、モスアイ構造体と同様の機能をもつ反射防止ナノ構造体を射出成形で作製し、さらに、新たに開発した自己形成柱状成膜技術によりナノ構造体内部に柱状の構造体を形成する。これにより、広い入射角範囲で世界最高レベルの低反射特性が実現できる。(入射角60度での反射率は、モスアイフィルムに比べて1/7まで低減される。) さらに、この技術により、従来難しかった無機親水膜の超親水状態が長期間に渡って維持でき、防曇機能が発現できることが分かった。これらの特性から、高い視認性と防曇性が要求される大面積曲面車載パネルへの適用や、曲率半径の小さい超広角レンズへの適用などIoT技術への貢献が期待できる。
また、東亜電気工業は、産総研から大面積ナノ凹凸金型技術のライセンス供与を受け、約50cm角までの大面積3次元ナノ構造金型量産製造ラインの操業を開始した。大面積ナノ構造体金型や成形品などの販売を始める。
2.背景
近年、自動車や家電製品にはディスプレーパネルやセンサーが多く搭載されており、次世代のIoT化に向けて、これらの部材の高機能化が要求されている。たとえば、自動車のメーターパネルやセンターコンソールパネルには高精細な液晶パネル、ヘッドアップディスプレ-には光学レンズ付きディスプレーが採用され始めているが、これらのディスプレーパネルには昼夜問わず優れた視認性が要求される。このため、パネル表面に、広波長帯域・広入射角の反射防止機能をもつ光学部材の導入が求められている。
また、IoT技術に対応するために、耐環境性に優れたセンサーレンズも要求されており、防曇機能の維持など、反射防止だけなく複数の機能を持つ部材が要求されている。低製造コストで、従来の製造法では得られない広波長帯域・広入射角範囲の反射防止光学部材を実現する新しい反射防止技術として、モスアイ構造体が注目されている。モスアイ構造は、すでに、液晶テレビや一眼レフカメラなどで実用化されているが、光学部材の高機能化のため、より一層の反射防止特性の向上が望まれている。
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産業技術総合研究所