SRF無線プラットフォームの無線通信安定化の効果を実証
製造現場における無線通信の利活用を促進

背景
製造現場では、生産性向上のために無線通信を利用した製造システムの導入が年々進んでおり、今後も更に増加するものと予想されます。一方、製造システムの通信には高い安定性が求められるため、ときどき接続が切れることがある・受信データが大きく遅延することがある、などの無線通信の不安定性の課題を解決する必要があります。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は複数の無線システムが混在する環境下で安定した無線通信を実現することができるSRF無線プラットフォームの提案を行い、フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)においてSRF無線プラットフォームをシステムの基本構成として採用した通信規格の策定が進められています。 無線通信を利用したユースケースのひとつとして、無人搬送車等の移動体上で撮影した動画をリアルタイムで監視するなどの動画の利活用の要望が高まっています。しかしながら、無人搬送車では、床面での反射波の影響による通信品質の低下や移動に伴うハンドオーバー時のデータ通信の停止などの要因によって安定な動画の無線通信ができないケースがあり、移動体上で撮影した動画の活用に制約が生じています。製造現場での動画活用を促進させるため、NICTは村田機械株式会社の協力を得て、村田機械株式会社本社(京都)内の開発品試作工場において、これらの課題を解決し安定な動画無線通信を実現することが期待できるSRF無線プラットフォームの共同実験を実施しました。

成果
食品工場内の無人搬送車を模擬した実験系として、床面・壁面・天井が金属であり電波の反射波の影響が大きく無線回線状態の悪化が想定される無線環境を構築しました。この系を用いた動画無線通信実験により、従来の無線LANでは反射波の影響により受信動画の停止が約1分間に複数回発生するのに対し、SRF無線プラットフォームでは、複数無線リソース統合制御の並列伝送ダイバーシチ合成の効果により、乱れや停止のないスムーズな動画が受信できることを確認しました。パケット到達率は100%で遅延時間は33msec(30fpsの場合でのフレーム間隔)以下となっていることが確認されました。 さらに、無人搬送車の走行に伴うハンドオーバーを模擬した実験系として、走行ルート上に設置した2箇所のアクセスポイントの送信電力の調整によりハンドオーバーが発生する無線環境を構築しました。この系を用いた動画無線通信実験により、SRF無線プラットフォームでは、複数無線リソース統合制御機能のシームレスハンドオーバーの効果により従来の無線LANで発生するハンドオーバー時の通信の停止を回避することができ、ハンドオーバー中において乱れや停止のないスムーズな動画が受信できることを確認しました。パケット到達率は100%で遅延時間はほぼ33msec(30fpsの場合でのフレーム間隔)以下となっていることが確認されました。

今後の展望
FFPAでは、2021年にSRF無線プラットフォーム技術仕様および試験仕様の策定を完了し、SRF無線プラットフォームに準拠している機器を認定する認証プログラムを開始しており、2022年度以降、SRF無線プラットフォーム対応機器の市場展開が見込まれています。NICTと村田機械株式会社は今後も引き続き協力し、製造現場における無線通信の利活用を促進させるため、安定な無線通信を実現することが期待できるSRF無線プラットフォームの普及に向け、SRF無線プラットフォームの有効性の実証を進めていきます。

補足説明

SRF無線プラットフォーム
SRF無線プラットフォームの機能のひとつである複数無線リソース統合制御では、送信パケットのミラーリングあるいは符号化により送信データ量を2倍に冗長化した後2つの無線チャネルを使用して並列伝送します。床面反射波の影響等により一方の無線チャネルのパケットが消失した場合でも、並列伝送によるダイバーシチ合成の効果により通信品質を維持できることが期待されます。

また、一般的な無線LANでは、移動体の走行に伴うハンドオーバー制御のため、ハンドオーバーの際に5~10秒オーダーのデータ通信の停止が発生します。SRF無線プラットフォームでは、複数無線リソース統合制御により、ハンドオーバー発生領域において移動端末が2つのアクセスポイントとの間で並列伝送することでシームレスなハンドオーバーが実現できることが期待できます。
フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)
フレキシブルファクトリパートナーアライアンスは、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現するSRF無線プラットフォームの規格策定と標準化及び普及の促進を通じ、製造現場のIoT化を推進するために2017年7月に設立された非営利の任意団体です。メンバー機関は、2022年7月末現在、オムロン株式会社、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、サンリツオートメイション株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構、日本電気株式会社、富士通株式会社、村田機械株式会社、シーメンス株式会社、一般財団法人テレコムエンジニアリングセンターの9者です。

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

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