二酸化炭素をほとんど排出せず、天然ガスから有用化学品を直接合成
~高性能・高耐久な鉄酸化物サブナノクラスター触媒を開発~

ポイント
  • 分子状鉄–タングステン酸化物を用いることで、世界で初めて600度で長時間安定な鉄酸化物サブナノクラスター触媒の開発に成功した。
  • メタンから従来の鉄酸化物触媒を超えるホルムアルデヒド・一酸化炭素への転換を達成し、同時に発生する二酸化炭素量の低減も達成した。
  • 天然ガスを有用化学品に転換できるようになれば、現代社会が直面する石油依存という問題からの脱却や二酸化炭素排出の低減が可能になる。

東京大学 大学院工学系研究科の矢部 智宏 助教、山口 和也 教授らの研究グループは、世界で初めて600度のメタン酸化条件下で長時間安定な鉄酸化物サブナノクラスター触媒の開発に成功しました。さらにメタンから従来の鉄酸化物触媒を超えるホルムアルデヒド・一酸化炭素への転換を達成し、二酸化炭素排出量の低減にも成功しました。

天然ガス(メタン)を原料とする新たな化学品合成技術が望まれていますが、メタンの活性化には高温に熱する必要があり、このような過酷な条件では生成物がさらに酸素と反応し、二酸化炭素が排出されることが課題でした。従来の鉄酸化物触媒では、メタン酸化に対して高活性を示すことが知られていましたが、高温条件により触媒の劣化を引き起こし、触媒活性は時間とともに低下していく点が依然として課題でした。そこで本研究では、分子状鉄–タングステン酸化物を触媒の前駆体に用いることで、二酸化炭素の排出を抑えながら効率よくメタンを転換し、さらに600度でも触媒が劣化しない、長時間安定な鉄酸化物サブナノクラスター触媒の開発に成功しました。

具体的には、従来の鉄酸化物触媒では二酸化炭素の排出量が生成物全体の27パーセントであったのに対して、今回新たに開発した触媒では9パーセントと少ない二酸化炭素排出量で、より効率良くホルムアルデヒド・一酸化炭素へ転換することに成功しました。本成果により、天然ガスを有用化学品に転換でき、現代社会が直面する石油依存という問題からの脱却や二酸化炭素排出の低減が可能になります。今後、高性能・高耐久性を持つ金属酸化物サブナノクラスター触媒を設計できるため、さまざまな工業触媒プロセスへの応用が期待されます。

※記事の無断転用を禁じます。