全固体電池の性能を加熱処理で大幅に向上~電気自動車用電池への応用に期待~

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の小林 成 大学院生(博士後期課程3年)と一杉 太郎 教授は、東京大学のElvis F. Arguelles(エルビス アルグエレス) 特任研究員と渡邉 聡 教授、産業技術総合研究所の白澤 徹郎 研究グループ付、山形大学の笠松 秀輔 助教らと共同で、全固体電池の固体電解質と電極が形成する界面の抵抗(界面抵抗)が、大気中の水蒸気によって大きく増加し、電池性能を低下させることを発見した。さらに、増大した界面抵抗は加熱処理することにより10分の1以下に低減し、大気や水蒸気に全く曝露せずに作製した電池と同等の抵抗に改善できることを実証した。つまり、全固体電池の低下した性能を、加熱処理だけで大幅に向上させる技術を開発した。

高速な充電や高い安全性が期待される全固体電池は、リチウムイオン電池の代替に向けて活発な研究が展開されている。しかし、固体電解質と電極が接する界面における抵抗(界面抵抗)が大きく、充電に要する時間がリチウムイオン電池より長くなることが課題だった。 本研究では、全固体電池に用いる電極が大気中の水分に由来するプロトンの侵入によって著しく劣化し、電池性能の低下をもたらすことを明らかにした。しかし、加熱処理により、その低下した性能が大幅に改善することを見いだした。そのメカニズムは、Liイオンの移動を妨げるプロトンを除去することであると多面的な分析や計算によって明らかにした。この成果は、全固体電池の実用化に向け、大きく貢献するものである。本研究成果は2022年1月6日(米国時間)に米国化学会誌「ACS Applied Materials & Interfaces」にArticleとして掲載された。

ポイント
・全固体電池用の電極材料をさまざまな気体に曝露した結果、大気や水蒸気から電極内に侵入するプロトン(水素イオン)が電池性能を低下させる原因であることを解明。
・しかし、その低下した性能は、150度程度の加熱処理によって大気に曝露しない電池と同等の性能に改善することを実証。
・実用が期待される粉体を用いた全固体電池の作製プロセスにおいて、電極材料は大気曝露されるため電極表面にプロトンが存在している。したがって、性能が劣化した状態にあると考えられる。それが本手法により大幅に改善される可能性がある。

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