リチウムイオン電池を超えるエネルギー密度の固体電池

固体電池技術は、現在電気自動車(EV)に電力を供給しているリチウムイオン電池に代わる、より軽量で、安全性の高い技術として浮上しています。リチウムイオン電池は、コストや電力密度、走行距離の点で進歩を遂げましたが、2021年11月1~4日にポルトガルのリスボンで開催された技術会議「Web Summit 2021」で紹介された固体電池は、リチウム電池を上回る性能と安全性が期待されるようです。

その一例が、EV向けバッテリーの開発を手掛けるSolid Powerが発表した固体電池です。同社が開発した固体電池は、EVのパワートレインの性能向上、排出ガスの削減、信頼性の向上を実現するとのことです。Solid Powerの創業者でCEO(最高経営責任者)を務めるDouglas Campbell氏は、同社の固体電池は、リチウムイオン電池に比べてエネルギー密度が高いと主張しています。この設計では、液体電解質を硫黄ベースの固体イオン伝導化学構造に置き換えています。同固体電池は、リチウムイオン電池と同じ生産ラインでの製造が可能とのことです。

Campbell氏はプレゼンテーションの中で、「リチウムイオン電池は通常、約30~35℃に保つ必要がある。熱は電池寿命を縮めるため、EVメーカーはバッテリーパックに冷却機構を統合している」と説明しました。同氏はさらに、「冷却機構は主要なコスト要因となっている。大まかな目安であるが、バッテリーパックの冷却コストがEVバッテリーのコスト全体に占める割合は、約10%だ。これはささいな額ではない」と付け加えました。

同社のもう1つのセールスポイントは安全性です。Campbell氏は、「リチウムイオン電池は、誤用すると非常に危険になる可能性がある」と強調しました。「YouTubeには、誤用されたバッテリーが熱暴走する動画があふれている。問題は、誤ったリチウムイオン電池の使い方をすると、電池がショートしてしまうことだ。リチウムイオン電池は、正極と負極が物理的に接触すると、エネルギーを瞬時に放出しようとするため、熱が発生して液体電解質が発火する」(Campbell氏)

固体電池は、従来のリチウムイオン電池の可燃性液体電解質を、独自の硫化物固体電解質に置き換えています。これによって、固体電池の安定性が増すとともに、幅広い温度範囲で安全性が向上します。さらに、固体電池は、エネルギー密度が充電式電池と比較して最大75%向上するため、現在の製造プロセスと互換性のある、より安価でエネルギー密度の高いバッテリーパック設計が可能になります。

Campbell氏は、「リチウムイオン電池の製造と同様に、材料は粉体の形で設備に投入される。粉末状の電解質と活性材料は、大量のスラリーに加工された後、スタックセルアーキテクチャに組み込まれる」と述べています。その上でCampbell氏は、「われわれが必要としないのは、典型的なギガファクトリーの(資本支出の)約30~35%に相当する形成プロセスだ」と述べました。これは、リチウムイオン電池を製造するTeslaが所有するような巨大施設を指しています。

Solid Powerは現在、320ワット時(Wh)/kgのエネルギー密度を持つ2アンペア時(Ah)セルを生産しており、100Ahのセル容量で500Wh/kgまでスケールアップしています。同社の第3世代セル設計では、ニッケルやコバルトといった高価な金属を排除することができ、正極のコストを90%削減することができるとのことです。Cambell氏は、「現在のリチウムイオン電池で最も高価な材料の使用をできるだけ抑えるようにしている」と語りました。

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